《短編》ガラクタ。
それからアラタが腹減ったとか言ってわめくので、仕方なく二人で居酒屋に来た。


その頃にはアルコールも手伝ってあたしも上機嫌になっていて、寝てないんだと言った彼に気遣いをみせる優しさも生まれていたのだ。


本当に、自分勝手な人間だと思うけど。



「それよりお前こそ、何やってた?」


「彼氏と喧嘩してた。」


「…彼氏、居んのかよ。」


「モテるんだから仕方ないじゃない。」


「自分で言うなよ。
スッピンは薄い顔してるくせに。」


「スッピン関係ないし。」


「まぁ、喧嘩するぐらいなら別れろよ。」


「何それ。
俺にしろ、とか言いたい?」


「つか、これも頼んどけ。」


そう、命令口調で言ってのけたアラタは、残り少なくなったビールを流し込んでその味に眉を寄せた。


相変わらず全然会話になってないけど、あたし自身、誰かひとりで満足している姿なんか想像出来なくて、自らのビールをあおりながらさっさと会話を終わらせた。


確かにアラタも鳳凰も独占したいけど、でも、あたしは誰かに独占なんてされたくなんてないから。



「特別に、アンタもあたしのものにしてあげる。」


「何だそれ。」


上目がちに言った台詞を彼は、ハッと鼻で笑った。


全部あたしのだとか、真っ先に電話してきたとか、アラタの言葉が本当だったとするなら、何で彼があたしにそこまでするのか。


それはわからなかったけど、でも、あたし達は確実に、お互いを求め合っているのだ。


ドロドロでも、醜いものだったとしても、繋がっているのならばそれで良い。


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