《短編》ガラクタ。
あの夜は、二人でベロベロになるまで酔っ払った。


と言っても、アラタは本当に寝てなかったらしく、空腹も手伝ってビール3杯飲んだ頃には、死にそうな顔してたっけ。


よく事故らずに帰れたと思うけど、珍しく彼はDVDをつけることもなく、あたしを抱き締めるようにして眠りに落ちたのだ。


まるで子供みたいな顔してる自分の所有物が可愛くて、あたしはそんな寝顔を見ながら、気付けば同じように眠っていた。







それからのあたしは、まるでアラタと一緒に暮らしているかのように、彼のマンションに入り浸っていた。


別にアラタもそれで良いと言った様子で、どうしようもないあたし自身を受け入れるように必ず抱いてくれる。


愛しい鳳凰と、そして最高のセックスをもたらしてくれるアラタ。


ついでにビールもあるし、そんなもののおかげなのか、あたしが毎日そこそこ機嫌が良いことは、言うまでもないだろう。



「つか、今度みんなで山でも行こうぜ。」


「やだよ、マジ勘弁。
山とか凍死するし、ひとりで行け。」


ひらめいたように言ったアラタにあたしは、睨むように眉を寄せた。


本日も彼の部屋で恒例らしい賭けトランプが行われていて、すっかりあたしもこのメンバーに馴染んでしまったわけだけど。


アラタの中学の後輩で料理人のコージくんを筆頭に、工業高校卒でそのまま電気関係の会社に就職したチャマくんは、配線のプロだと豪語していた。


モッシュくんはアルコールがダメな人で、片付け係兼みんなの送迎係らしい。


パンクな格好したサブだけは常にうるさくて、唯一あたしは呼び捨てにしているのだけれど。


アラタが何の仕事をしているのかなんて未だに知らないけど、でも、“俺は部屋を提供しているから良いんだ”とわけのわからないことを言ってたので、放置しておいた。


あたしは何でかみんなから敬語のままで、マイさんとか呼ばれてるけど、何か気持ち悪い感は拭えないまま。


毎日はまぁ、そんな感じ。


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