《短編》ガラクタ。
「何かさ、思い出す。」


「…何が?」


「最初に会ったとき、いきなりアンタに手引っ張られてラチられたこと。
てか、走るなよ、って感じだし。」


「あぁ、あれね。
目を細めてネオンの中を駆け抜けるとさ、キラキラしてんのに包まれてる感じ、しない?」


言われてあたしは、小首を傾げてみた。


確かに目を細めると、ネオンの色が淡く瞳に映り、まるで宝石の輝きの中に居るようだと思うけど。


何となく納得してみれば、“俺、それって嫌いじゃない”と、そう言いながら震えるあたしの首に自らのマフラーを掛けてくれた。


元々はサブのもので、ロック系のそれはドクロが並んでて、ギャル系の格好してるあたしにはひどく不似合いだったけど、でも、アラタの香りがした。



「もう少しだからな。」


そう、まるで子供に言うように言葉を投げ、彼はあたしの頭を優しく撫でる。


アラタの鼻先が少し赤くて、そんな姿に思わず口元を緩めてしまえば、今度は恋人のように肩を引かれた。


まったく、あたしを何だと思っているのか。







連れて来られたあたしの目前には、シャッター4つ降りていた。


二階は何かの事務所っぽいし、多分、駐車場か何かだとは思うけど、ポケットから鍵を取り出したアラタはガチャッと施錠を解き、そしてそれを上に上げて隙間を作った。


腰をかがめて二人で三分の一ほど開いたシャッターの中へと身をくぐらせると、真っ暗な中で確かにアルコールのような匂いが鼻をつき、思わず眉を寄せてしまう。



「電気つけるから、そこで待っとけよ。」


そう言った彼の靴音が響き、少しするとパチッと鳴った音と共に明かりがつき、いきなりの眩しさに思わず目を瞑った。


恐る恐るそれを開けてみれば、やっぱり元々は駐車場だったのだろうスペースはがらんとしていて、とりあえず的に見渡したのは言うまでもない。


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