《短編》ガラクタ。
「…ここって、何?」


第一印象は、学校の美術室とか図工室って感じだろうか。


20畳以上はあるスペースの四隅には、パイプ椅子を畳んで並べた時のようにキャンバスが無造作に重ねられていて、端には大きな戸棚が2つほどあった。


そしてその中心には、ポツンと置かれた布の掛かったもの。



「一応、俺のアトリエ?」


「…アトリエ?」


「俺、これでも絵とか描く人なんだよ。」


「…何それ、漫画家?」


「それ、マジで言ってる?」


テレビとか観ないあたし達は、暇な時間に広告の裏なんかに漫画のキャラとかを描いて遊んだことも何度かあった。


アラタは結構上手くて、ついでに言えばあたしが爪をいじってる時でも、ここは何色の方が良いとか口を挟んでいたし、

服のセンスも良いから、絵心ってゆーか美的センスもそれなりにあるのだろうとは思っていたけど。



「画家、ってヤツだよ。」


「…嘘ではなくて?」


「マジな話。」


それでも疑るあたしに彼は、痺れを切らしたのか真ん中に置かれていたものの布を取った。


その瞬間、やっぱり驚いてしまう。


目の前には大きめのキャンバスがあり、そこに描かれているのは真っ黒で塗り潰された中に宇宙っぽい感じで色んな色が混ざっている、壮大な絵。


その意味不明感が何故かアラタらしいと感じてしまい、そんなことであたしは、彼の言葉の真偽の程を見た気がした。



「アンタ、マジで最高かも。」


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