《短編》ガラクタ。
「俺はただ、好きな時に好きなことしてりゃ良いんだ。
お前の爪と一緒でさ、趣味程度のつもりなんだけど、気付いてたら仕事になってた。」


「だから?」


「だから、時には強制されるし、マジで嫌気も差してたけど、でも俺、これしか知らないし?」


そう、肩をすくめたアラタの顔は、どこか寂しそうにも見受けられた。


あたしだって好きな時にだけ爪いじったりしたいし、その気持ちも何となくわかる気がするけど、やっぱりそれが仕事となると違うのだろう。


お金をもらって、そして時に求められるのだから。



「これも、個展に出すの?」


「出すけど、売らない。」


「…何で?」


「ひとりで眺めてたいから。」


「…オナってんの?」


「まぁ、似たようなもんだ。」


柔らかい顔して笑ったアラタは、煙草を取り出した。


アトリエの中は全ての世界を遮断しているように、静かすぎて息使いさえも響く。


何となく、アラタはあたしのことが好きなんじゃないのかな、なんてことを思ったけど、でも、口には出さなかった。



「じゃあこれ、あたしにちょうだい。」


「…どうするつもり?」


「惚れたから。
だから、欲しいの。」


「お前、最高だな。」


何が最高なのかはわからなかったけど、それでもアラタはどこか可笑しそうに笑うだけ。


何でも欲しいと思ったものは手に入れなきゃ気が済まないのはあたしの悪い癖で、ただ、アラタの全部を欲しいと思った。


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