《短編》ガラクタ。
「で、ホントは?」


「俺、あそこからの景色好きなんだよ。
車のライトとかテールランプが繋がって、生きてるみたいに見えない?」


あぁ、確かにそれはあるな、と思ってしまう。


黄色と赤色の蛇みたいで、何となくそれが、ナウシカに出てくるオウムの暴走とダブってしまう感があるのは、あたしだけじゃないのだろうか、と。


チビチビと金色の液体を口に運びながら、そんなことを考えてる自分を思わず鼻で笑ってしまうのだけれど。



「お前こそ、ホントは?」


「お前じゃなくて、あたしはマイ。」


「…それ、名前?」


「名前じゃなかったら何よ。」


「ははっ、だよな。」


お互い、微妙に噛み合わない会話を繰り返すだけで、だからこそ、相手のことが深くはわからないまま。


けど、何となくそれで良いのだと思った。


だって別に、昨日ヤった男のことで覚えていると言えば、早漏だったってことだけで、名前も顔もイマイチ思い出せないのだから。


だから、この男だって似たようなものなのだろう、きっと、明日になれば過去の人だ。



「ねぇ、聞いて良い?」


「ん?」


「アンタってさ、人生つまんないとか思ったら、どうする?」


「…思ってんの?」


「まぁね、だから聞いてんの。」


「面白いこと見つける、かな。」


「…例えば?」


「例えば、お前みたいなのラチってみる、とか?」


やっぱりあたし、ラチられてんじゃん。


何だか聞いて損した気がして、あからさまにため息を混じらせてしまうのだけれど。


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