《短編》ガラクタ。
テーブルの上には本当に食べられるのかと見まごうほどの量の単品メニューが運ばれて来て、これは全部、アラタが頼んだもの。


あたしはそれに、つつくように箸をつけるだけなのだが。



「それにしてもお前、すげぇ爪してんな。」


「あぁ、ただの趣味?」


スカルプにジェルネイルを施しているあたしの指先をまじまじと見つめながら、彼は突然に感嘆したような声を漏らした。


ちなみにこれは、全部自分でやったものだ。



「爪いじって可愛くしてる時だけは、集中してるから色んな事考えなくて良いってゆーか?」


「あぁ、わかる気がする。」


「まぁ、これのおかげでバイトとかもなかなか雇ってもらえないんだけどさ。」


「へぇ、ギャルもそれなりに苦労してんだな。」


「だから、ギャルじゃねぇよ。」


どんなに否定しても、この爪でおまけに髪の毛はイエローブラウンを巻き、ギャルショップの服を纏っていれば、世間的にあたしはそれと呼ばれる部類に入るのだろうけど。


それでも、そんな言葉に一括りにされることが、何だか許せないのだ。



「その趣味、仕事にしようとか思わないの?」


「思わないね。
他人の爪に興味無いし、あたしは自分が良ければそれで良いタイプだから。」


そう言ったあたしに彼は、苦笑いを浮かべるように視線を落とした。


珍しくアラタが普通っぽいことを言ったような気がしたけど、でも、それを気に留めることもなくあたしは、唐揚げをつついてビールを飲んで。


たまに煙草吸って一服したりなんかして、ほろ酔いで気分はちょっとだけ回復って感じ。


別にアラタもそれ以上はあたしのことを聞いて来ない感じだし、あたしも別に、コイツのことなんか聞かないし。


明日とか超寒いらしいよ、なんて言われ、マジ最悪、なんて返したりで、そんな会話を酒のつまみにし、あたし達は適当に打ち解けた。


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