《短編》ガラクタ。
別にもう、このまま騙されても良いと思った。
これなら誰だって騙されるし、すぐにこの後、酒のつまみにあたしの顔が面白かったとかって話になるのだろうから。
いや、それ以外なんてないし、そうじゃなきゃ困るんだ。
「集中治療室に居ます。」
なのにあたしが聞き取れたのは、そんな言葉のみだった。
下が芝生だったとか、あと少しズレてたらレンガで頭打ってたとか、雨降ってるから血が流れてどうのとか、何かそんなことを言ってたけど、あたしの脳が受け付けることはない。
聞けば聞くほど嘘だと思えなくて、車が辿り着いたのが総合病院だった時には、笑うことすら忘れていた。
静かな廊下にはあたしの心臓の音が響いているようで、それでも実際には、二人分の足音だけ。
「マイさん!」
大きな扉の前にいつものメンバーが集まっていて、サブとチャマくんは涙を浮かべていた。
薄暗いそこに“手術中”の文字だけが浮かぶように照らされていて、そこからあたしの足は動かないまま。
だって二人の服には真っ赤な色がこびり付いていて、とてもじゃないけど油絵の具の色ではなかったのだから。
こんなもの一枚を隔てた向こうで、アラタが生死の境を彷徨っているとでも言いたいのだろうか。
「…俺とチャマがたまたま遊びに行ったら…」
「アラタさん、血まみれで!」
「…死んだら、どうしようって…」
二人は口々に言いながら、声を震わせた。
多分、これは現実なのだろう、と思った瞬間にあたしは、サブの胸ぐらを掴んでいたのだ。
「ふざんじゃねぇよ!」
これなら誰だって騙されるし、すぐにこの後、酒のつまみにあたしの顔が面白かったとかって話になるのだろうから。
いや、それ以外なんてないし、そうじゃなきゃ困るんだ。
「集中治療室に居ます。」
なのにあたしが聞き取れたのは、そんな言葉のみだった。
下が芝生だったとか、あと少しズレてたらレンガで頭打ってたとか、雨降ってるから血が流れてどうのとか、何かそんなことを言ってたけど、あたしの脳が受け付けることはない。
聞けば聞くほど嘘だと思えなくて、車が辿り着いたのが総合病院だった時には、笑うことすら忘れていた。
静かな廊下にはあたしの心臓の音が響いているようで、それでも実際には、二人分の足音だけ。
「マイさん!」
大きな扉の前にいつものメンバーが集まっていて、サブとチャマくんは涙を浮かべていた。
薄暗いそこに“手術中”の文字だけが浮かぶように照らされていて、そこからあたしの足は動かないまま。
だって二人の服には真っ赤な色がこびり付いていて、とてもじゃないけど油絵の具の色ではなかったのだから。
こんなもの一枚を隔てた向こうで、アラタが生死の境を彷徨っているとでも言いたいのだろうか。
「…俺とチャマがたまたま遊びに行ったら…」
「アラタさん、血まみれで!」
「…死んだら、どうしようって…」
二人は口々に言いながら、声を震わせた。
多分、これは現実なのだろう、と思った瞬間にあたしは、サブの胸ぐらを掴んでいたのだ。
「ふざんじゃねぇよ!」