《短編》ガラクタ。
「どうしよっか、これから。」


約束通りアラタに奢ってもらい、店を出る頃には日付が変わってしまっていたのだけれど。


2時間ばかり話しても相手のことを何ひとつ知ったわけでもなく、コイツは明日仕事とかなんじゃないのか、なんてことが頭をよぎったが、でもすぐに、そんなものは消えてしまった。


だって別に、あたしには関係ないのだから。



「家帰る?
それとも、俺んちにペット見に来る?」


「…ペット?」


ペットを飼っているようには見えないけれど、どうせセックスの誘い文句のひとつだろうなと、軽くあたしは言葉を返してみた。


ネオンに包まれた街の中で、並木通りの街路樹が、青色の輝きを淡く照らしている。



「鳥、飼ってんだよ。」


「マジ?
あたし、鳥って苦手。」


「アレルギー?」


「じゃなくて、思い出すんだよね。
ほら、よく道端で轢かれて死んでんじゃん。」


「ははっ、あんなのと一緒にすんなよ。」


「じゃあ、どんなの?」


「すっげぇかっけぇの。」


「へぇ、見たい。」


別に、鳥なんてピーチクパーチクうるさいだけで、本当は大嫌いなのだけれど。


それでも明日だって暇だし、上目がちに視線だけを送ってみると、彼はフッと唇の端を上げ、“ついて来いよ”とそんな台詞。


もしかしたら明日の朝刊の記事には、先ほどの居酒屋のオッサンの証言が載るのかな、なんてことを思うと、思わず口元を緩めてしまうのだが。


それからイルミネーションの青の中を真っ直ぐに進み、コインパーキングに停めていたアラタのものだと言う四駆に二人で乗り込んだ。


死にたくはないけど、でも、どうしてこうもワクワクするのかがわからない。


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