Perverse
車窓を見たまま一言も話さない柴垣くんに私は声をかけてみる。



「柴垣くん…ねぇ…」



振り向くことも返事もしてくれない彼に、私は再度勇気を出して発した。



「柴垣くん、ありがとう」



それでも沈黙が流れる。



「…ごめんね?」



どの言葉を発しても微塵の反応も見せてくれない柴垣くんの態度に、とうとう私の心も折れてしまって押し黙った。



タクシーを降りてホテルのエレベーターに乗り込んでも柴垣くんは視線すら合わせてくれない。



確かに変わると口ではいいながら全く実行できていないけれど。



確かに柴垣くんに助けてもらわなかったら危なかったけれど。



それでもそんなに私の存在を無にすることないじゃないか。



溢れそうになった涙を我慢していると、いつの間にか部屋の前に着いていた。



自分の部屋の前に立っている柴垣くんに向かって「おやすみ」と一言告げると、私はカードキーを差し込みドアを開けた。



後ろでドアが閉まっていくと共に漏れていた光が細くなる。



部屋の中に入り電気を付けようと手を伸ばすとフワッと風が起こり、締まりかけていたドアが大きく開いたのがわかった…。
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