Perverse
パッと中西さんの肩越しから顔を出すと、そこにはやっぱり柴垣くんの姿。
「お前こんな所にいたのか。帰るぞ」
柴垣くんはギッと私を睨みつけて顎で促す。
「はいっ!」
中西さんの緩んだ手をすり抜けると、私は従順な犬のように柴垣くんの傍に駆け寄った。
「ちょっと…まだ一次会の途中やん。帰るの早すぎん?それに三崎さんはこの後オレと…」
「申し訳ないっすけど」
焦った中西さんの言葉を強い口調で遮ると、柴垣くんは私の荷物を中西さんの手から引ったくるとバサリと私に押し付けた。
「途中ですけど帰ります。コイツ飲み過ぎて忘れてるみたいですけど、今回の展示会のレポートと課長への業務連絡残してるんで」
「こんな時間から?」
「こんな時間からです」
柴垣くんは強引に私の腕を引っ張ると、
「じゃお疲れ様でした。また明日」
有無を言わさぬ速さで中西さんに背を向け歩き出した。
店を出てからも緩まない柴垣くんの力のこもった手に、私の腕も限界を迎える。
「柴垣くん…痛い」
ぽそりと聞こえるか聞こえないかの小声で呟くと、柴垣くんは腕を振り払うかのようにして離した。
そのまま無言で通りかかったタクシーを止めると、私を奥に押し込めて乗り込みホテルを告げた。