Perverse
身支度を整えると何度も鏡で確認した。



あんな事になったけど、少しでも柴垣くんからいい女だと思ってもらいたい。



せめて私を抱いたことを後悔してほしくないから。



「よし。忘れ物もなし」



今日は展示会途中で会場を出て、そのまま空港に向かうため、キャリーバッグは持って出る。



部屋をグルリと見回して確認したけれど、どうしてもベッドに目を奪われてしまうのは許して欲しい。



名残惜しくて、もう一度だけシーツを撫でると、私は部屋を後にした。



柴垣くんの部屋の前に着くと、戸惑う前に勢いに任せてチャイムを押した。



中から大きくドアが開くと、柴垣くんの顔を見た瞬間に身体全部が熱くなった。



バツが悪そうに苦笑いした柴垣くんが、



「おはよ」



と先に挨拶してくれる。



「おはよう」



極めて明るく返したけれど、柴垣くんの苦笑いに全てを悟った。



「ちょっと中に入らねぇ?」



真顔になってそう言われたけれど、柴垣くんの口から『無かったことに』なんて聞かされたら、私の心は崩壊してしまうかもしれない。



そう思った私には、



「やめておく」



そう言ってニコリと笑顔を返すことが精一杯だった。
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