Perverse
「この辺り、痴漢多かったんでしょ?だから柴垣くん、結菜と一緒に帰ってたんだよね?」



「ああ。けど捕まったらしいぞ。貼り紙も剥がされて、もう心配ないみたいだ」



出張前に痴漢が捕まったとは聞いていたけれど、それを柴垣くんの口から直接聞くと、もう一緒に帰る必要性がなくなったと言われているようで辛い。



「柴垣さんと結菜さん、会社でも噂になってますよね?まんざらでもないんじゃないですか?」



沙耶ちゃんがおどけるけれど、柴垣くんは至って冷静だ。



「あんな噂、ほっときゃそのうち消えてなくなる」



バッサリと切られたような胸の痛みに、私は反応すら出来なかった。



一気に縮まった私達の距離は、私のせいで一気に遠ざかってしまった。



それはもう取り返しのつかないもので、決して元には戻らない。



この道を2人で何度も歩いたのに。



泣いて笑って、たくさん会話したのに。



この腕に抱かれたのに。



何もかも全部が夢だったかのように消えてしまった。



もう、どうしようもないことなのか、と問うても答えは出ない。
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