Perverse
その場から動くことが出来ない私に、柴垣くんの顔からは戸惑いが現れる。
その柴垣くんの表情にどうすればいいのか分からないけれど、私の足も思うように動かない。
「あの…」
ハッと思い出して私はガサガサと袋の中を物色する。
「はいこれ。好きでしょ?」
そう言って渡したのはジーマの瓶。
以前一緒に帰った時に、柴垣くんが好んで飲むと言っていたお酒だ。
「よく覚えてたな。」
「忘れないよ。柴垣くんの好きなものは…」
柴垣くんとの会話も時間も、全て私にとっては大切なの。
せっかく楓達二人がくれたきっかけを無駄にはしたくない。
もう1度柴垣くんとの関係を建て直さなくては。
「三崎って人の好みの差し入れするの上手だって得意先でも評判だぞ」
ふっと笑う柴垣くんにそう言われて、何だか泣きたくなってきた。
そんなつもりじゃないのに。
「柴垣くんは得意先でもなんでもないでしょう?」
私が放ったその言葉に、柴垣くんから笑顔が消えてしまった。
「そりゃそうだな。俺はただの同期だし」
「ちがっ…」
「いいよ、違わねぇし」
私の言葉を遮った柴垣くんの言葉は有無を言わせない重さがあって、私は意欲も力も抜けていくのを感じた。