Perverse
言葉が見つからない。



よくそんな事を思ったりするけれど、今日こそこの言葉の意味を実感したことはないんじゃないだろうか。



何を言っても、どう表現しても一切届かない。



今の柴垣くんにはそんな頑なな雰囲気がある。



もちろんそうしてしまったのは私自身。



「避けるような真似してごめんな。上手くリセットできなくてさ。けどもう大丈夫だから」



真っ白になった脳内が、どんどん黒に侵食されてゆく。



「これ、サンキューな。明日からはちゃんと同期として仲良くやっていこうぜ」



「柴垣くん…私は…」



「ほら、楠原と水田が待ってんだろ。急げよ。じゃあな」



最後に私の頭に触れた柴垣くんの手が離れると、彼は振り向かずに自分のマンションへと帰っていった。



私はバカだ。



どうしようもないバカだ。



エントランスに入ると、とめどなく溢れ流れる涙を止めることもせず、ただひたすらに流し続けた。



真っ赤に目を腫らした私に2人は驚いていたけれど。



うまく説明出来ない私の事情を察知してくれたのか、何も言わずにそばにいてくれたのが本当に有難かった。
< 121 / 290 >

この作品をシェア

pagetop