Perverse
「そっか」



妙に明るくそういった柴垣くんは、にっこり笑った。



「三崎は凄いな。さすが人間できてるよ」



「そんなんじゃ…」



「いやいや、こんな事があっても『お勉強になりました』って精神で怒りも責めもしねぇんだもんなぁ。びっくりだ」



オーバーな程に私を褒める柴垣くんの口調が白々しくて、何だか逆に責められている気がした。



「さすがみんなの理想の三崎さん。そりゃ好かれるわけだ。俺には真似できねぇわぁ」



「ちょっとっ」



さすがに煽られていると分かる言い草。



ムッとして柴垣くんを止めると、彼はニヤリと意地悪そうに笑みを浮かべた。



「やっと怒った」



そっと私の頭をポンポンと優しく叩くと、



「ほんっとお前はバカだな」



そう言って今度はくしゃくしゃと撫で回した。



「柴垣くん、ちょ…髪が…」



頭頂部で丸まりを見せているであろう私の髪を、必死で手ぐしで整える。



どうして柴垣くんは私をわざと怒らせるの?



胸のうちの疑問は解れてくれないけれど。



「お前はどうしていつも自己犠牲で自己完結するわけ?」



ピタと手を止めて柴垣くんを見上げると、いつの間にか笑みは消えていて。



真剣な眼差しが私を捉えていた。
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