Perverse
立ち止まったそこは、もうマンションの前だった。



柴垣くんはマンションの横路地に私を促す。



「お前はどうしてもっと自分を認めてやらねぇんだ?」



少し強い口調に、叱られた子供のように頼りなく眉が下がった。



「お前が人一倍努力している事。自分の売上より顧客を一番大切にして営業してることくらい俺でも知ってる」



「……」



「だからこそ、今お前がどう思ってるかくらい手に取るようにわかる」



私のことをちゃんと見てくれてる人がいる。



私の感情を解放させてくれようとしてくれる人がいる。



「お前の本心は?ちゃんと俺には言えよ。その上で今お前は悪くないって言ってやれるのは、俺以外にいねえだろ?」



それが柴垣くんだという事が、泣きそうに嬉しい。



「俺の前で格好つけんな。ちゃんと自分の気持ちを認めてやれ」



どうしよう。



柴垣くんにそんな事言われたら、本当の私の気持ちが溢れ出てきてしまう。



今まで抑えてきた感情は決して綺麗なものではないのに。



「いいのかなぁ……」



ぽそっと呟いた私に。



「いいんだよ」



柴垣くんはそう言って微笑んでくれた。
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