Perverse
徐々に力強くなっていく柴垣くんの腕。



結構な力で抱きしめられているのに、全然痛くなくて若干の息苦しささえ心地いい。



……そうなんだけど。



「…柴垣くん…ねぇ…」



もぞもぞと腕の中で動いてみるが、その腕は全然緩むことはなく。



私の告白に対しても一向に答える兆しを見せない。



この腕の強さと甘さが柴垣くんの気持ちとリンクしていればいいのに。



竹下さんとの噂を信じていたし、玉砕も覚悟の上での告白だっただけに、どうしてもそう確信ができない。



「…ちょ…柴垣くんっ」



「うるさい」



やっと口を開いてくれたのに、彼は無愛想にそう言った。



「信じられねぇ、この結末。今までの俺の苦悩も今日1日の葛藤も。全部津田さんの掌で転がされてたって事かよ。つーかなんなの津田さん。お釈迦様かよっ」



察するに、私は知らない柴垣くんと津田さんとのやり取りは、上手く津田さんの策に嵌る結果となっていたのだろう。



「それもこれも…」



片手でついっと顎を掬われると、ものすごい至近距離で柴垣くんと視線が合わさる。



「全部お前が悪くね?」



「え?」



「お前がアノ時、ちゃんと俺を受け入れてれば…」



「アノ時…?どの時?」



「うわ、マジかよ。お前の中で本当に無かったことになってんのか」



「……あ」



そのワードで思い出した『アノ時』



「今ココで再現してやってもいいけど?」



「あっ…」



そう言うともう1度唇が触れそうになって。



「やめてくれます?ここ会社なんで」



妙に冷めた声に私達は凍りつき、慌てて離れた。
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