Perverse

柴垣くんのマンション前で怖気づいてどれ位たっただろう?



あれから会社を出て、なるべくゆっくりと歩きながら駅へと向かった。



通常運転の電車を降りた後も、近くのコンビニで買い物をしながら時間を潰してみた。



けれど柴垣くんが帰ってくる気配はなく、結果として主不在の部屋に入る事になりそうだ。



渡されたキーケースを取り出してオートロックを解除すると、自動ドアは大歓迎とばかりに開く。



後ろを振り向き振り向き、エレベーターのボタンを押すと、こんなときに限って既に一階にいたようで私を迎え入れる。



「……どうしよう…」



6階に着いて部屋番を探すと、610号はマンションの突き当たりだった。



すぐ隣は私のマンション。



とても遠くに感じたこともあったけれど、実際はこんなにすぐ近くにいたんだ…。



今、柴垣くんの部屋の鍵を持ってこの場に立っているなんて、想像だにしなかった。



この場で待っていたいけれど、傍から見ればストーカー。



私は意を決してシリンダーに鍵を入れ、ゆっくりゆっくり回すとカチャリと音がする。



玄関を開くと真っ暗な中に柴垣くんを感じる香りがして、もう逃げられないことを悟った。

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