Perverse
「これ、もう食えねぇな」



火を止めてフライパンを私から受け取り、柴垣くんは渋々中身を捨てる。



「慣れないのに頑張ってくれて、凄く嬉しかったよ?ありがと」



柴垣くんのワイシャツの袖部分をついっと引っ張ると、彼はこちらに振り向き私をふんわりと抱きしめてくれた。



「そんな顔して可愛いこと言わないでくれる?いつもより一時間以上も早起きして、時間がたっぷりあるの知ってっから、襲っちまうよ?」



見上げなくてもわかる、柴垣くんの含んだ笑いと台詞は、私の心臓を大きく高鳴らせた。



……襲われちゃっても……いいかも……。



そう思ったのは柴垣くんには内緒にしておこう。



言っちゃったらきっと、確実に襲われてしまうだろうから。



柴垣くんの背中に腕を回し、彼の温もりに包まれていていると、途端に彼のお腹が鳴った。



「やっべ。昨日体力使ったから、腹減った……」



見上げると意味あり気に笑う柴垣くんと目が合って、私の顔は真っ赤に染まっただろう。



「私の家にハムと玉子がある。サラダも常備してるから、持ってくるね」



「だったらお前んち行きたい」



「せっかく柴垣くんがコーヒーとトースト作ってくれてるんだから、ここで食べちゃだめ?」



うちに来ることを拒否しているわけではないが、柴垣くんの思いやりを無駄になんてしたくなかった。
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