Perverse
重い足を気持ちで動かしながら戻って来ると、私の隣のデスクに主はいなかった。
安堵のような残念のような。
複雑な心境だけれど、今日はもう会わないうちに帰ってしまおう。
そそくさと事務処理に取り掛かり大慌てで業務を終わらせたところで、デスクにいた津田さんから声をかけられた。
「三崎さん、もう上がり?」
「あ…はい」
「急いでるみたいだけど何か用事?」
「いえ、そういう訳ではないんですけど」
「そう、じゃあ良かった」
津田さんはにっこりと微笑むと、自分のパソコンの電源を落とした。
「俺も終わったんだ。そこまで一緒に帰ろうよ」
「え…でも…」
「用事、ないんでしょ?」
そうだ。
あまりにさり気なく用事の有無を聞かれていたんだった。
「…じゃ、駅まで…」
断ることも出来ないこの状況でそう答えると、津田さんの視線が私の後ろを捉えてさらに優しく笑った。
「じゃ送るよ三崎さん」
津田さんの言い回しが気になってそっと後ろを振り向くと、そこには無表情の柴垣くんが立っていた。