Perverse
「2人で出ようよ」



中西さんが詰めた距離分、私は後退りして離れる。



「ずっと出るタイミング見計らいよったっちゃん」



そんなこと頼んでもないし計画もしていない。



「近くにゆっくりできるバーがあるとよ。三崎さんが出張で来るって聞いてからずっと考えとったんよね」



いや…そんなこと1人で考えないでよ。



背中に壁が当たり、もう後退りできない。



今までの自分の曖昧な態度が、急に自分の首を締めてくる。



「三崎さん、行こう」



壁に追いやられ手を付かれ、逃げ道を塞がれた。



いわゆる壁ドンの状況に焦った私は、



「いや…行けないですよ。荷物もあるし…」



なんとも間抜けな言葉を口走った。



「荷物ならもう持ってきた」



言われて壁についていない方の手を確認すると、置いていたはずの私の荷物をしっかりと手にしていた。



「ほら、行こう」



グッと腕を取られるけれど、私の身体は動かない。



嫌だ!



「…柴垣くんと一緒に帰るし…」




「ホテルはわかっとうし問題ないやろ?」



そう言われた時、私は思い切ってその手を払おうとした。



その瞬間…。



「おいコラ三崎」



酷く不機嫌そうなあの声が聞こえた。
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