私の遠回り~会えなかった時間~
「これ、おいしい。」

そんな私の言葉に、加代さんは笑う。

「それは私が作って持ってきたのよ。」

「私は仕上げをしただけ。」

お母さんも春巻を食べながらうなずきながら言った。

「加代さん、本当においしいわ。」

「これからは少し手の込んだ料理もどんどん作らなくちゃね。」

本当に楽しそうな加代さんの様子を見て、私も嬉しくなった。

「そう言えば加代さんはもう引っ越したの?」

お母さんの言葉に私は顔を上げた。

「うん、美容院にはあの子に住んでもらおうと思って、私は近くのアパートに移ったの。またそっちにも遊びに来てね。」

加代さんは旦那様を早くに亡くしているから、ずっと一人暮らしだった。

「しばらくは店も手伝うし、食事の支度は私がするんだけどね。でもあの子にもプライベートがあるから、別に住んだ方が良いと思って。私も気を遣うのは嫌だしね。」
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