私の遠回り~会えなかった時間~
180センチ以上ありそうなその身長から見下ろされた私は落ち着かない。

「とにかく座って。」

美容師さんに促されるまま、私は大きな鏡の前の椅子に座る。

内装は外国の家を感じさせるような白を基調とした可愛い花柄の壁紙。

そしてその雰囲気を裏切らない花をデザインした様な照明。

私が椅子に掛けると、後ろから美容師さんが私の髪を触る。

横に広げてみたり、手ですいてみたり。

「ふ~ん、結構手入れされているんだな。」

私の毛先を見ながらこぼれた美容師さんの言葉。

「ああ、お前の事、知紗って呼ばせてもらうから。俺は彬で良いから。」

私はちょっとムッとして鏡に映る美容師さん…彬さんを見る。

「何だかお客さん扱いをされていないような気がするんですけど。」

私から出た愚痴にも聞こえるその台詞。

彬さんは一瞬鏡の中の私に目を合わせた。

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