私の遠回り~会えなかった時間~
そのめがねの中の切れ長の目はなかなか鋭い。

「料金を取らないんだから当たり前だろう。」

怒っているように聞こえる彬さんの言葉。

「私、そんなつもりで来たんじゃないです。ちゃんと料金はお払いします。だって美容師さんはお仕事で切ってくれるんでしょう?」

私はムッとした顔をして答える。

「彬。」

ぼそりと彬さんは答える。

「えっ?」

私は思わず聞き返す。

「彬って呼べって言っただろう。それにここのオープンは明日だ。今日の知紗はお客じゃないんだ。」

あまりにもぶっきらぼうな彬さんの様子に私は少しびくつく。

「料金に関しては、ずっと取るつもりはない。」

しかも今本当に呼び捨てにされたよね。

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