私の遠回り~会えなかった時間~
私はもう一度まじまじと鏡を見る。

確か加代さんは今年30歳になるって言っていたよね。

ストライプのシャツにジーンズ。

すらりとした体形に、その何でもないような服装もとても似合っているような気がする。

「なあ、俺に任せてくれない?」

鏡の中の彬さんは急ににこりと笑った。

それはさっきまでのそっけない表情とあまりにも違っていて…。

へぇ~、こんな笑顔が出来るんだ。

接客商売なんだから、いつも笑っていればいいのに。

私はそんな生意気な事を思いながら、一瞬彬さんの表情に気を取られた。

この人、きっと女の人にモテるんだろうな。

そうぼんやりと私は思った。

「知紗、聞いている?」

彬さんのその言葉に私は我に返る。
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