私の遠回り~会えなかった時間~
そして何も考えずにうなずく。
頭の中の焦点が合っていないような感覚。
「じゃあ、シャンプーするよ。」
彬さんは私が座っている椅子を半回転させる。
私は改装前と場所が変わらないシャンプー台に移ると、彬さんは顔にタオルを乗せた。
ああ、気持ちが良い…。
加代さんとは違う感覚。
何かを放っているような温もりを感じる加代さんの手。
髪にその手から何かを与えてくれるような加代さんのシャンプーの仕方。
それに対して彬さんのその長くて細い指は馴染んでいく感じ。
髪の中の良さを引き出してくれるような彬さんのシャンプーの仕方。
彬さんは私が思うよりもっと繊細な人かもしれない。
ふぅと意識が遠のきそうになる。