私の遠回り~会えなかった時間~
体には力が入っているのに。

ちょうど良い温度のシャワーに、頭の地肌からすべての穢れが出ていくようだ。

「よし。」

シャワーを止める音が聞こえて、つぶやくように彬さんは言うと、私の顔からタオルを取った。

髪の毛を拭いてくれる彬さん。

私の頭がぐらぐらと揺れる。

私がボーとしているうちに、頭はタオルで包まれる。

「どうぞ。」

私はくらくらした頭のまま、ぼんやりと立ち上がる。

一瞬足にきちんと力が入らなくて、がくんと落ちそうになった。

「おい。」

そんな私をかがんで抱きとめてくれた彬さん。

彬さんの肩に私の額がぶつかる。

「ごっ、ごめんなさい。」
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