私の遠回り~会えなかった時間~
彬さんはおもむろに鋏を持つ。

彬さんは左利きなんだ。

そんな風に思った瞬間だった。

どこかでこの場面にも覚えがあるような…。

でも何だか違和感も同時に覚える。

「えっ?」

思わず私が出した声と共に落ちる私の切られた髪。

背中まであった髪が一部分肩のラインまで短くなっている。

「私は毛先をそろえるだけのつもりで…。」

私は思わず大きな声を出していた。

そして後ろを振り返ろうとした。

「…良いから。」

「でも…。」

私は必死な声を出した。

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