私の遠回り~会えなかった時間~
「でもそれもこれも知紗のためなんだぞ。俺は知紗との約束を守るために美容師としての腕をマックスまで極めたかったんだ。」
私のため…?
私の表情は驚きから緊張感の抜けたものになった。
「分かりません。どうして私のためなんですか?」
「やっぱり何にも覚えていないんだな。まあ、知紗は小さかったからな。」
「そろそろ教えて下さいよ。」
何だかもやもやしていて、スッキリしないこの状態から抜け出したい。
「まあ、追々な。」
でも彬さんはするりと話をごまかす。
「でも…。」
「とにかく今は食べよう。明日は二人とも仕事なんだぞ。ああ、知紗は今晩ここに泊まって行くか?」
ニヤリと笑った彬さんはとても意地悪だ。
私はさっきの小さな箱を思い出してしまった。