御曹司と契約結婚~俺様プレジデントの溺愛に逆らえません~
(……え? ……え?)

あまりに突然の出来事に、膝がガクガクと震えだす。
崩れ落ちそうになった体を彼がすかさず抱き留めた。

「そんなにキスがよかった? 光栄だな、これから毎日してあげようか」

「っ……!?」

再び奏が耳を疑ったのは、その囁きがあまりに彼らしからぬ言葉だったから。
奏の知る鷹凪は、こんな色めいた台詞を吐く人ではなくて――

「拒絶しなかったってことは、受け入れたってことだろう?」

それなのにその男は、放心する奏に無茶苦茶な理論を押しつけて、ニッと口の端を跳ね上げる。

つい先ほどとはまるで別人だった。
誠実で、強く凛々しく清廉潔白、罪を知らぬはずの顔つきが、今や一転して狡猾なものへと変わっていた。

神に反旗を翻して堕天した悪魔のごとく、闇を含んだ笑みを浮かべる。

「契約成立。今、この瞬間からお前は俺の婚約者だ」

テレビの前では晒したことのない蠱惑的な表情。

成すすべもなくその魅力にとらえられ、呆然としていると。 

部屋のドアを乱暴にドンドンと叩く音が聞こえてきた。
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