冷酷な騎士団長が手放してくれません
カダール公国の王子との結婚を目前にして破談となり、生家に出戻りしたソフィアを、アンザム邸の一同は神妙な面持ちで迎えた。
母のマリアは今にも倒れそうなほどに顔面蒼白だったし、あの能天気な兄のライアンですら落ち込んだ顔をしている。アンザム卿は優しく出迎えてはくれたものの、やつれた顔では憔悴を隠しきれていなかった。
「カダール公国の王子に婚約を破棄されたことは、世の中に知れ渡っています。ああ、ソフィア。あなたはこれからどうするつもりなの? 出戻りのあなたと結婚したいなんていうもの好きなんて、どこにもいませんよ?」
ソフィアを前に、マリアはさめざめと泣いた。マリアの言っていることは、もっともだ。王子に捨てられたいわくつきの令嬢を、好んで妻に迎える貴族はまずいないだろう。
「お前は、馬鹿だよ。殿下は、あれほどお前のことを気に入ってらしたのに」
ライアンも、いつになく棘のある言い方をしてきた。
「どうせリアムと仲良くし過ぎて、殿下を怒らせたんだろう。だが覚えておけよ、ソフィア。リアムは、永遠にお前の傍にいるわけじゃないんだぞ」
ライアンの思いがけない言葉に、ソフィアの胸は鋭い痛みを受ける。
「リアムだって、いつかは結婚するだろう。あいつと結婚したがっている女は、いくらでもいるからな。結婚すれば、リアムはこの邸からは出て行くんだぞ」
ライアンに言われて、ソフィアは初めて気づいた。この先気が遠くなるほどに長い時を一人身で過ごすことになっても、リアムが傍にいてくれさえすればいいと思っていた自分に。
辺境伯令嬢であるソフィアと孤児で騎士のリアムは、絶対に一緒にはなれない。
ソフィアの恋が叶う日は、永遠に訪れないのだ。
(それでも、リアムがこの家を出て行く時まで一緒にいられれば充分だわ)
リアムとの思い出だけを胸に、細々と暮らそう。老いても毎日あの湖畔に出かけ、リアムのことを思い出そう。
ソフィアは、そう心に決めた。
そしてこの恋心を、心に秘めることを誓った。
その誓いが破れる日が、目前に迫っているとも知らずに。
母のマリアは今にも倒れそうなほどに顔面蒼白だったし、あの能天気な兄のライアンですら落ち込んだ顔をしている。アンザム卿は優しく出迎えてはくれたものの、やつれた顔では憔悴を隠しきれていなかった。
「カダール公国の王子に婚約を破棄されたことは、世の中に知れ渡っています。ああ、ソフィア。あなたはこれからどうするつもりなの? 出戻りのあなたと結婚したいなんていうもの好きなんて、どこにもいませんよ?」
ソフィアを前に、マリアはさめざめと泣いた。マリアの言っていることは、もっともだ。王子に捨てられたいわくつきの令嬢を、好んで妻に迎える貴族はまずいないだろう。
「お前は、馬鹿だよ。殿下は、あれほどお前のことを気に入ってらしたのに」
ライアンも、いつになく棘のある言い方をしてきた。
「どうせリアムと仲良くし過ぎて、殿下を怒らせたんだろう。だが覚えておけよ、ソフィア。リアムは、永遠にお前の傍にいるわけじゃないんだぞ」
ライアンの思いがけない言葉に、ソフィアの胸は鋭い痛みを受ける。
「リアムだって、いつかは結婚するだろう。あいつと結婚したがっている女は、いくらでもいるからな。結婚すれば、リアムはこの邸からは出て行くんだぞ」
ライアンに言われて、ソフィアは初めて気づいた。この先気が遠くなるほどに長い時を一人身で過ごすことになっても、リアムが傍にいてくれさえすればいいと思っていた自分に。
辺境伯令嬢であるソフィアと孤児で騎士のリアムは、絶対に一緒にはなれない。
ソフィアの恋が叶う日は、永遠に訪れないのだ。
(それでも、リアムがこの家を出て行く時まで一緒にいられれば充分だわ)
リアムとの思い出だけを胸に、細々と暮らそう。老いても毎日あの湖畔に出かけ、リアムのことを思い出そう。
ソフィアは、そう心に決めた。
そしてこの恋心を、心に秘めることを誓った。
その誓いが破れる日が、目前に迫っているとも知らずに。