ふつつかな嫁ですが、富豪社長に溺愛されています
シャワー後のためか、彼は眼鏡を外している。

私がソファの真後ろに立つと、「夕羽ちゃんから来てくれるの珍しいね」と嬉しそうに言って立ち上がり、その肩からバスタオルがハラリと落ちた。

すると、裸の上半身があらわになる。

肉体労働をしているわけではないのに、無駄な脂肪のない引き締まった体付きをしている。

この家にはトレーニングルームもあるので、時々鍛えているのだろう。


彼は嬉しそうな顔をして、「それなに?」と私の右手の皿に興味を持つ。


「夕食、これからだよね? 炒飯作ったんだけど、よかったらーー」


そう言いかけた私は、ハッとした。

視線を下げれば、裸なのは上半身だけではなく、彼は黒いボクサーパンツ一枚しか身につけていないのだ。

大事なところ以外は全てをさらけ出している彼に、少々うろたえてしまう。


「よっしー、悪いけど、服を着てもらってもいいかな?」


心地よくクーラーが効いているので、湯上りの汗もすぐに引くはずだ。

パンツ一丁でも、私が出ていけば問題はないのだが、話しがあってここにいる。

今夜の私はまだ一滴の酒も飲んでおらず、炒飯だけを持ってきたのも、そのためであった。
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