溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
でもそれだけ。
コンコン、机の上をペンが叩いた音に目を向けると、メモの上にサラサラと蔵人さんがペンを走らせる。

“昼、一緒に食いに行こう”

うんうんと頷いたら、私を追っ払うように蔵人さんはしっしと小さく手を振った。
顔がにやけないように引き締めて、自分の席に戻る。
こういうとき、表情筋が死んでて無表情な蔵人さんが羨ましい。

ご機嫌で仕事をこなす。
けれど私の気分はすぐに、どん底までたたき落とされた。


「くぼぅ」

ねっとりと絡みつくような声で呼ばれ、身体がびくりと反応する。

「……はい」

「ちょっと話、いいかぁ」

石川さんはにたぁっと、弱いものをいたぶる喜びに溢れた顔で笑った。
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