溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
「な……」

花山さんはまだ怒りがおさまらないのか、わなわなと身体を震わせている。

「あまり騒ぎにしたくないんです。
君嶋課長にご迷惑がかかりますから。
これで許してもらえないでしょうか」

深々とあたまを下げたけれど、花山さんは黙っている。
土下座しろっていうならしてもかまわない。

呼吸も憚られるような緊迫した空気がしばらく流れた後、おもむろに花山さんは口を開いた。

「なんかしらけた。
あんたと結婚するなんて、君嶋は所詮、その程度の男だったってことね」

高圧的に言い放ち、鼻からフン! と力強く息を吐き出すと、カツカツと威勢よくヒールの音を響かせて花山さんが去って行く。
それにあわせて複数の靴音も慌ただしくいなくなった。

はぁーっ、顔をあげるとため息を吐き出した。
これでどうやら今回の嵐は過ぎ去ったようだ。

蔵人さんに迷惑をかけたくないという気持ちに嘘はない。
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