溺愛ラブ・マリッジ～冷徹上司が豹変しました～

「せっかく君嶋を見返してやれると思ってたのに、この結果はどうだ？」

このワインフェスの結果が、石川さんの出世のチャンスだっていうのはわかってた。
なら、人任せにしないで自分でちゃんとやるべきだったんじゃないんだろうか。
だから石川さんは出世できないのだ。

きっと、はっきり言ってやったらすっきりするだろう。
でも男を前にすると急に、思っていることを言えなくなる。
そんな自分の性格はコンプレックスだったが、もう直らないのだろうと諦めている部分もあった。

「全部、無能なおまえのせいだよなぁ」

ぎりぎりと石川さんの右手が私の頬を掴んで潰す。
周りの人たちはちらちらと視線を送って見て見ぬ振りをするばかりで、誰も助けてくれない。

「おまえが無能だから君嶋に俺が莫迦にされて、おまえが無能だから俺が出世できないんだよなぁ」

頬に食い込む指が痛い。
私を見つめる石川さんの目はどこか狂気を感じた。

「なぁ、なんとか言ったらどうなんだ？
なあ！」