溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
「いただきます」

なにも言わなくったって、いや、なにも言わないからこそ、蔵人さんが喜んでいるのがわかる。
好きなものを前にすると蔵人さんは緩みそうになる顔を必死にいつも通りに保っているのか、特に無口になるから。

「ありがとう。
これであと一週間、頑張れる」

食後のコーヒーを淹れながら、私の顔は見ないで蔵人さんがぼそっと呟いた。
私の位置からはそこしか見えない、眼鏡のかかる耳は赤くなっている。

「無理しないでくださいね。
そうだ、落ち着いたらゆっくり温泉とか行きませんか。
あ、でも、涼しくなるまでは忙しいですね」

照れを隠すように早口でまくし立てた。
コーヒーを注ぎ終わった蔵人さんの手が、私のあたまをぽんぽんする。

「そうだな。
新婚旅行も行ってないし、どこに行きたいか考えといてくれ」

「……はい」
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