溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
あれはいい思い出がないからだと思っていたが、そうじゃなかったんだと気づいた。

あの頃から蔵人さんは明確に、私を小雪と別人として扱っていたのだ。

代わりにしてないからこそ、わざわざ新しい結婚指環を買ってくれた。

それにウェディングドレスを選びに行ったときも、私自身に似合うドレスがいいと言ってくれた。

「蔵人さんはずっと、私を私として見てくれてたんだ。
小雪の代わりじゃなくて」

そんなことにも気づかず、ひとりで勘違いして悲劇ぶって悩んでいた私はなんと滑稽なんだろう。

「待たせた」

まもなく蔵人さんが浴室から出てきた。
急いでいたのか髪は濡れたままだ。

「俺はな」

蔵人さんは隣に座ると、ぎゅっと私を抱き締めた。

「何度も言ったけど、和奏にはなんだって話して欲しい。
どんな小さなことでも」
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