突然現れた御曹司は婚約者
「腹減った。飯食わせて」
連絡もなしに、なに食わぬ顔で平日の夜にやって来るのだ。
これは普通に驚く。
初めて来た日には思わず「何しに来たんですか」と聞いてしまった。
それでも、今では蓮が来るのを待ちわびていて、玄関を開けた先に蓮の笑顔があれば口元が緩んでしまう。
いつのまにか、蓮に惹かれていたんだって気付かされる。
それには毎回来るたびに丁寧に仏壇に線香をあげてくれることも関係している。
祖父母は蓮との縁談を断っていたらしいけど、この姿勢を見れば許してくれるんじゃないかとも思えるのだ。
礼を重んじる人のことは好いていたから。
ただ…
「これで5度目ですが、同じこと言わせてもらいますね?」
そう前置き、慣れた様子でダイニングテーブルの椅子を引き出し、腰掛ける蓮に告げる。
「来るなら来ると事前に連絡してください。食事の支度はすぐには出来ないんです。それに今日は一体なにがあったんですか?なんなんですか、この荷物」
大きなスーツケースは出張の帰りか何かだろうか。
答えてはくれないけど、そこまでして来る必要はないんじゃないかと蓮の体を心配して思う。
「心配するな。3日置きに来るって言っただろ?スーツケースが邪魔なら玄関に置くし。いや、でも、それより腹減った。早く飯、食わせてくれ」
ワガママな小学生かっ。
でもお腹を空かせている人を無下には出来ない。
手早く作り、テーブルに並べていく。