突然現れた御曹司は婚約者

「布団を敷いているので、寝室はなく、逆にどの部屋も寝室になり得ます」


事務的に答えるとさすがの蓮も観念したのか苦笑いを浮かべて私を下ろした。


「栞を抱く楽しみはとっておくとするか。でも…」


蓮の瞳が妖しく光った。

その直後、手が後頭部へと回り、蓮の方へ引き寄せられた。


「ん…っ」


2度目のキスは少し強引だった。

でも唇が離れてから目を開ければ蓮も同じようにゆっくりと開けて、そして額をくっ付けた。


「嫌なら嫌だって言って。嫌ならこれ以上、しないから」
「嫌だなんて…」


思わない。

思えない。

好きだから。

額を離し、蓮を見上げる。


「証明してください。私のことが好きなんだって証明して…っ!」


性急に唇が重なった。

本当にやめるつもりはあったのかと聞きたくなるほどに。

私の体を壁際へとキスをしながら追い詰めていく。

そして、一気に深いキスへと変わった。


「口開けて」


低くかすれた声で蓮は言った。

それに応えるように少しだけ開けるとその隙間から舌が入り込み、私の舌を絡め取る。

ゆっくり、じっくり、互いの舌の感触を堪能し合う。

恥ずかしいけど、キスがこんなに気持ちいいものだなんて知らなかった。


もっとして欲しい。

催促するように蓮の首に手を回す。

すると一度唇を離した蓮の目付きが変わった。

一転して激しいキスに変わり、それは唇だけに留まらず、首筋、鎖骨の辺りまで落ちていったのだ。


「あっ……もう…」


腰が抜けそう。

蓮にしな垂れ掛かるとしっかりと抱きとめてくれた。


「悪い。自制がきかなかった。でもこれで分かっただろ?俺がどれだけ栞のこと好きか。どれだけ栞を求めているのか」


息が上がりながら話す蓮に小さく頷けば、さらにきつく体が抱き締められた。


「好きだよ。栞しか目に入らない」


耳元で囁かれた愛の言葉。

でもどこか不安を抱いているように感じさせる苦しげな声が私を素直にさせる。
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