突然現れた御曹司は婚約者
「栞さん、あんな人とどうやって知り合ったんですか?」
「星崎さん、すごい玉の輿じゃない」
同僚たちが仕事の合間を縫って、私に声を掛けてくる。
そしてその場にいた牧田くんも、休憩室で出くわしたときに声をかけてくれた。
「栞は厄介な男を選んだな」
久しぶりに話し掛けられて気持ちが舞い上がる。
でも話題が話題だけに気を落ち着かせて牧田くんの分もコーヒーを淹れて、次の言葉を待つ。
「自信家だし、スゲーカンに触る奴だけど、羨ましいよ。栞と付き合えることも、ああいう風に堂々と恋人宣言出来ることも」
押しが強くて自分勝手で困るところもあるけど、奥手な私には蓮の強引さが合っていた。
牧田くんもそのことに触れる。
「寧々の言った通りだった。栞は押しの強い男にあっさり持ってかれちゃったんだよな。でも栞が惚れるの分かるよ。栞のことを諦めさせるためにあえて殴られるよう仕向けるなんて普通出来ることじゃない。敵わないよ。謝らないけどな」
切なく微笑んだ牧田くんに、ミルクをたっぷり入れた牧田くん好みのコーヒーを手渡す。
それをひと口含んでから牧田くんは続けた。
「でもさ、栞たちは中途半端に遠恋みたいな感じになるんだよな。大丈夫か?会いたくてもすぐに会えない距離って難しいぞ」
「そうなのかな?」
すぐに会えない距離にいるからこそ会えた時嬉しいんじゃないのだろうか。
ただ、毎回こっちに来てもらうのは無理をさせているのではないか、と思う。
「それより浮気とかさ。心配じゃないのか?アイツモテるだろ」
たしかにその心配は大いにある。
頻繁に会って飽きられても嫌だ。