突然現れた御曹司は婚約者

「栞、心配かけて悪かったな」


翌日。

お見舞いに来た私に蓮はベッド上から声をかけてきた。


「具合、いかがですか?」


ベッドサイドに置かれた椅子に腰掛けて様子を伺う。


「顔色はいいですね」


点滴に繋がれた腕は痛々しいけど、昨日の顔とは全然違う。

相当痛かったんだろうと思ったら胸が苦しくなる。


「そんな顔するな。もう本当に大丈夫だから。傷口は痛むがそれでも1週間もすれば退院出来る」
「毎日お見舞いに来ますね」
「それは嬉しいな。どうせなら泊まって行けばいい。この部屋、ハイクラスのホテル並みに広いから大丈夫だ」


たしかに特別室と扉に書かれていただけのことはあって、室内は病院とは思えないほど広く綺麗だ。

でも私は泊まれない。

他人だから。

他人だから入院の手続きも、手術の同意書も、病状を聞くことすら出来なかった。

すぐ近くにいたのに。

ただ心配するだけしか出来なかった。


「なんの役にも立てないんです」
「そんなことない。救急車を呼んでくれたのは栞だし、車内で手をさすっていてくれたのも栞だ。十分役に立ってくれていたよ」


蓮は優しいからそう言ってくれるけど、私はお母さんたちが来てくれて、病状を教えてもらうまでの時間がものすごく長く感じられた。

だから私は覚悟を決めて、蓮に言う。


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