獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
――バンッ!!!
その時だった。
執務室の扉が勢いよく開かれ、大勢の足音が室内になだれ込む。
それは、獅子の紋章の縫い付けられた朱色の軍服に身を包んだこの国の騎士達だった。
「な、なんだ、君たちは……。何て無礼な……!」
剣を携えた百名近くのたくましい騎士達に室内を取り囲まれ、老人たちは目に見えて怯えていた。
室内に入りきらなかった騎士達が、執務室の前の廊下から回廊にかけてまで溢れかえっている。
「恐れながら、国王陛下。我々は、カイル殿下の案に従いたいと存じます」
一歩前に進み出ると、床に膝をつき粛々と言葉を述べたのは、赤毛の騎士のカールだった。
今はカイルが騎士団を仕切っているが、かつてはカールの父親が騎士団長を務めていた。カールの父親は、一回目のハイデル公国の国境越えの際に命を落としている。
「二度も失敗している国境越えをもう一度試そうとは、無謀すぎます。我々はもう、仲間を失いたくはない」
続いて、優男のブランも隣に膝間付く。
「カイル殿下は、私たちと共に日々厳しい訓練を積まれています。コンニャロと思うことばかりでしたが、ようやく気づいたのです。この国の権力者でありながら、我々と対等な目線で接してくださったカイル殿下の御心に。椅子に腰かけ高見の見物しかしないあなた方よりも、我々はカイル殿下を信じたい」
国王をはじめ、老人たちは皆呆気に取られていた。けれども、一番驚いていたのはカイルだろう。
彼らに厳しくしたのは、確かに彼らのためとこの国の軍事力を思ってのことだった。自分への憎しみから彼らが剣に磨きをかければいいと、非道なまでにつらく当たったこともあった。
自分は、憎まれ役には最適だ。とことんまで、憎まれればいい。
そう思っていたはずなのに――。
その時だった。
執務室の扉が勢いよく開かれ、大勢の足音が室内になだれ込む。
それは、獅子の紋章の縫い付けられた朱色の軍服に身を包んだこの国の騎士達だった。
「な、なんだ、君たちは……。何て無礼な……!」
剣を携えた百名近くのたくましい騎士達に室内を取り囲まれ、老人たちは目に見えて怯えていた。
室内に入りきらなかった騎士達が、執務室の前の廊下から回廊にかけてまで溢れかえっている。
「恐れながら、国王陛下。我々は、カイル殿下の案に従いたいと存じます」
一歩前に進み出ると、床に膝をつき粛々と言葉を述べたのは、赤毛の騎士のカールだった。
今はカイルが騎士団を仕切っているが、かつてはカールの父親が騎士団長を務めていた。カールの父親は、一回目のハイデル公国の国境越えの際に命を落としている。
「二度も失敗している国境越えをもう一度試そうとは、無謀すぎます。我々はもう、仲間を失いたくはない」
続いて、優男のブランも隣に膝間付く。
「カイル殿下は、私たちと共に日々厳しい訓練を積まれています。コンニャロと思うことばかりでしたが、ようやく気づいたのです。この国の権力者でありながら、我々と対等な目線で接してくださったカイル殿下の御心に。椅子に腰かけ高見の見物しかしないあなた方よりも、我々はカイル殿下を信じたい」
国王をはじめ、老人たちは皆呆気に取られていた。けれども、一番驚いていたのはカイルだろう。
彼らに厳しくしたのは、確かに彼らのためとこの国の軍事力を思ってのことだった。自分への憎しみから彼らが剣に磨きをかければいいと、非道なまでにつらく当たったこともあった。
自分は、憎まれ役には最適だ。とことんまで、憎まれればいい。
そう思っていたはずなのに――。