獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
◇
アメリがロイセン城に戻ってから三週間も経たないうちに、この国は大きく変わった。
まず、長年この国の政務を担ってきた元老院制が廃止になった。
そして今までは一切政務に関わることを許されなかったカイルに、軍事権の一部が引き渡されることとなった。
吹く風に穏やかな気配を感じ始めた夏の終わり。新しく指揮を執ることが決まったカイルの発案で、ロイセン王国の騎士団はハイデル公国の貿易の要であるクロスフィールド王国に攻め入ることが決まった。
今宵は出兵する騎士達を称え、ロイセン城で夜会が開かれる。
「アメリ様、とてもお美しいですわ……」
姿見の前に立つドレス姿のソフィアを確認するなり、着付けを手伝ってくれた侍女は感嘆のため息を吐いた。
アメリが身に付けているのは、以前カイルから贈られたライトブルーのドレスだった。くびれたウエストからはレースのスカートがふんわりと広がり、ベアトップの胸もとには細かな真珠が綿密にあしらわれている。
仕立ての際、体の寸法を測った覚えもないのに、不思議なほどにぴったりだ。
アメリの艶やかな黒髪を纏めてしまうのはもったいないと言われ、髪は敢えてそのままだ。背中まで伸びた真っ直ぐな黒髪には、あちらこちらに真珠の髪飾りが散らされている。
「今夜いらっしゃる方たちの中で、一番お美しいのは間違いございません。カイル殿下も、お喜びになることでしょう」
侍女の言葉に、アメリは瞳を曇らせる。
「カイル様は、今日はいらっしゃるのかしら……?」
アメリがロイセン城に戻ってから三週間も経たないうちに、この国は大きく変わった。
まず、長年この国の政務を担ってきた元老院制が廃止になった。
そして今までは一切政務に関わることを許されなかったカイルに、軍事権の一部が引き渡されることとなった。
吹く風に穏やかな気配を感じ始めた夏の終わり。新しく指揮を執ることが決まったカイルの発案で、ロイセン王国の騎士団はハイデル公国の貿易の要であるクロスフィールド王国に攻め入ることが決まった。
今宵は出兵する騎士達を称え、ロイセン城で夜会が開かれる。
「アメリ様、とてもお美しいですわ……」
姿見の前に立つドレス姿のソフィアを確認するなり、着付けを手伝ってくれた侍女は感嘆のため息を吐いた。
アメリが身に付けているのは、以前カイルから贈られたライトブルーのドレスだった。くびれたウエストからはレースのスカートがふんわりと広がり、ベアトップの胸もとには細かな真珠が綿密にあしらわれている。
仕立ての際、体の寸法を測った覚えもないのに、不思議なほどにぴったりだ。
アメリの艶やかな黒髪を纏めてしまうのはもったいないと言われ、髪は敢えてそのままだ。背中まで伸びた真っ直ぐな黒髪には、あちらこちらに真珠の髪飾りが散らされている。
「今夜いらっしゃる方たちの中で、一番お美しいのは間違いございません。カイル殿下も、お喜びになることでしょう」
侍女の言葉に、アメリは瞳を曇らせる。
「カイル様は、今日はいらっしゃるのかしら……?」