獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
夕方を過ぎ、夜の帳が降りると、ロイセン城の宴の間には次々とゲストが集まり始めた。
衰退しつつあるとはいえ、由緒正しき王朝のものとあって、宴の間はそれは見事な造りだった。
床には一面に真珠色の大理石が広がり、天井から下がるシャンデリアの光を受けて艶やかな光沢を放っている。
ぐるりと部屋を取り囲む石造りの壁には、朱色のカーテンで飾られた丸窓とアーチ窓が並び、正面には代々の王の肖像画が厳かに掲げられていた。
金模様で細かな装飾の施された天井は、中心部にこの国のシンボルである獅子の紋様が大きく彫り込まれ、談笑するゲストたちを見下ろしている。
アメリが侍女を侍らせ会場に姿を現すと、ゲストたちの視線が一気に集まった。ヒソヒソと耳打ちする様子から察するに、「あれが偏屈なカイル殿下の心を射止めた婚約者様だ」などと噂されているようだ。
朱色の軍服を着た騎士達はたくさんいたが、その中に案の定カイルの姿はなかった。
あの金糸雀色の神々しい髪は、人込みに紛れようとすぐに見つけられるはずなのに。
居心地の悪さにもじもじしていると、「アメリ様」と背後から声がかかる。
それは、ロイセン王宮付きの騎士達と同じく朱色の軍服を羽織ったヴァンだった。
「これはこれは、お美しい。あの目つきの悪い男に授けるのが惜しくなる」
「まだ言ってるの? あなたには、贔屓にしている女性がたくさんいるでしょうに」
ヴァンのおなじみの冗談を、アメリは笑顔で受け流した。
ヴァンも穏やかな笑顔を返すと、アメリの手を取り会場の奥にエスコートする。
幼い頃から馴れ親しんだ兄のような男の横顔を、アメリは見上げた。
明日、ヴァンもカイル達とともに出兵する。
ヴァンはもとはアメリ付きの護衛の騎士だが、この度彼のたっての願いで、王宮付きの騎士団に正式に加入が認められたのだ。
衰退しつつあるとはいえ、由緒正しき王朝のものとあって、宴の間はそれは見事な造りだった。
床には一面に真珠色の大理石が広がり、天井から下がるシャンデリアの光を受けて艶やかな光沢を放っている。
ぐるりと部屋を取り囲む石造りの壁には、朱色のカーテンで飾られた丸窓とアーチ窓が並び、正面には代々の王の肖像画が厳かに掲げられていた。
金模様で細かな装飾の施された天井は、中心部にこの国のシンボルである獅子の紋様が大きく彫り込まれ、談笑するゲストたちを見下ろしている。
アメリが侍女を侍らせ会場に姿を現すと、ゲストたちの視線が一気に集まった。ヒソヒソと耳打ちする様子から察するに、「あれが偏屈なカイル殿下の心を射止めた婚約者様だ」などと噂されているようだ。
朱色の軍服を着た騎士達はたくさんいたが、その中に案の定カイルの姿はなかった。
あの金糸雀色の神々しい髪は、人込みに紛れようとすぐに見つけられるはずなのに。
居心地の悪さにもじもじしていると、「アメリ様」と背後から声がかかる。
それは、ロイセン王宮付きの騎士達と同じく朱色の軍服を羽織ったヴァンだった。
「これはこれは、お美しい。あの目つきの悪い男に授けるのが惜しくなる」
「まだ言ってるの? あなたには、贔屓にしている女性がたくさんいるでしょうに」
ヴァンのおなじみの冗談を、アメリは笑顔で受け流した。
ヴァンも穏やかな笑顔を返すと、アメリの手を取り会場の奥にエスコートする。
幼い頃から馴れ親しんだ兄のような男の横顔を、アメリは見上げた。
明日、ヴァンもカイル達とともに出兵する。
ヴァンはもとはアメリ付きの護衛の騎士だが、この度彼のたっての願いで、王宮付きの騎士団に正式に加入が認められたのだ。