獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
鍛え上げられた背中が、小刻みに震えている。


「アメリ。もう、目覚めないのかと思っていた……」


アメリの首筋に顔をうずめ、まるで子供のように泣きじゃくる獣の髪を、アメリは優しく梳いた。


「ずっと、あなたの声を聞いていました。色とりどりの光も見えていました……。私は、どのくらい眠っていたのですか?」


「二年だ」


「二年も……」


驚くと同時に、カイルを抱きしめながら虹色に輝く部屋を見渡す。


言葉では伝えられなくても、この部屋を見れば分かる。カイルがどれほどアメリを愛し、アメリの目覚めを待ち望んでいたのかを。


ガラスの欠片一つ一つには、カイルの果てしない想いが込められていた。





そこでようやく、カイルはアメリの首から顔を上げる。


改めて見れば、以前よりも棘がなくなり、精悍な顔つきになっていた。


「……立派な王様になられましたね」


「立派な王様だ。お前に、約束したからな」


アメリが微笑めば、カイルも涙に濡れた顔で微笑み返した。







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