獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
アメリが眠りから目覚めて半年後。


ロイセン王国の王都リエーヌの中心部にあるシルビエ大聖堂では、国王の結婚式が行われることとなった。


王族に、貴族、それから平民を交えての結婚式は前代未聞である。


シルビエ大聖堂のあるシルビエ広場は、大聖堂に入りきらなかった人々で溢れかえっていた。


リエーヌの大通りにも所狭しと人が並び、この国の英雄とその新妻の結婚を心から祝福した。





太陽光を受けて煌びやかに輝くステンドグラスが神々しい大聖堂のヴァージンロードを、真珠色のウエディングドレスに身を包んだアメリはゆっくりと歩んで行く。


ドレスと同じ真珠色のベールはどこまでも長く神々しく、黒髪の花嫁の美しさと相まって、観客の誰もが感極まっていた。


「アメリ、なんて綺麗なんだい」


途中でエイダンの声が聞こえ、ぐすぐすとハンカチで鼻を啜っている彼女にアメリは微笑みかけた。


そのすぐ近くには、ミハエル老人の顔も見える。ミハエル老人はアメリを目が合うと、涙ながらに頷いて見せた。


その先に見える小さな背中は、カチンコチンに緊張しているアレクだ。二年前よりは幾分か大きくなっているものの、あどけない表情は変わっていない。


鍛冶屋にパン屋にガラス工房に遊びに来てくれた子供達。大聖堂の中は、アメリの知った顔で溢れていた。


自分の作ったステンドグラスに照らされた人々の顔を、アメリは幸せな気持ちで一人一人見つめた。


そして最後に、祭壇の前でアメリを待つこの国の英雄をしっかりと見据える。


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