獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「……どうした? 諦めたのか?」
抵抗をやめたアメリに、カイルが聞いてくる。
「分かったなら、さっさと荷物を纏めて母親のもとへ帰れ」
アメリの瞳から溢れた涙が、頬を伝い乱れたシーツに流れ落ちた。
「帰っても、母はいません。私が子供の頃に、亡くなりました。あの家に戻っても、私を待っているのは私のことを快く思っていない人間ばかりです」
アメリの言葉に、カイルは動きを止める。
「母は……」
鮮明に蘇った昔の記憶に、アメリは打ち震えていた。あの時の恐怖は、一生涯忘れないだろう。
「ハイデル公国の男達に、凌辱されて死んだのです」
弱小国であるロイセン王国は、ハイデル公国側の人間から蔑みの目で見られている。国境付近では、ハイデル公国の男たちがロイセン王国の女を襲う事件が頻発していた。
アメリの母も、その被害者の一人だった。さらに運が悪いことに、アメリの母は襲われた時に強く頭を打ち、そのまま帰らぬ人となってしまった。アメリは大急ぎで近くの民家に駆け込み助けを呼んだが、再び戻った時にはもう全てが手遅れだったのだ。
発注を受けたガラス細工を、届ける道中での出来事だった。死に物狂いでアメリを逃がした母の悲痛な叫びを、アメリは思い出さない日はない。
抵抗をやめたアメリに、カイルが聞いてくる。
「分かったなら、さっさと荷物を纏めて母親のもとへ帰れ」
アメリの瞳から溢れた涙が、頬を伝い乱れたシーツに流れ落ちた。
「帰っても、母はいません。私が子供の頃に、亡くなりました。あの家に戻っても、私を待っているのは私のことを快く思っていない人間ばかりです」
アメリの言葉に、カイルは動きを止める。
「母は……」
鮮明に蘇った昔の記憶に、アメリは打ち震えていた。あの時の恐怖は、一生涯忘れないだろう。
「ハイデル公国の男達に、凌辱されて死んだのです」
弱小国であるロイセン王国は、ハイデル公国側の人間から蔑みの目で見られている。国境付近では、ハイデル公国の男たちがロイセン王国の女を襲う事件が頻発していた。
アメリの母も、その被害者の一人だった。さらに運が悪いことに、アメリの母は襲われた時に強く頭を打ち、そのまま帰らぬ人となってしまった。アメリは大急ぎで近くの民家に駆け込み助けを呼んだが、再び戻った時にはもう全てが手遅れだったのだ。
発注を受けたガラス細工を、届ける道中での出来事だった。死に物狂いでアメリを逃がした母の悲痛な叫びを、アメリは思い出さない日はない。