獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
翌朝。


小窓から入り込む光に起こされ、アメリは腫れぼったい瞼を開けた。


昨夜、カイルがいなくなってからも泣き続けているうちに、いつの間にか眠ってしまったようだ。重だるい体を起こした途端に、昨日の恐ろしい出来事を再び思い出す。


カイルは、アメリを乱暴に襲おうとした。あれが、悪魔と揶揄される男の本性なのだろう。


人を人とは思わない。女を女として扱わない。全てを力づくでねじ伏せ、情けなく奪う野獣だ。


(でも……。あの人は、最後まで私を襲おうとはしなかったわ)


ズキズキと痛む頭を押さえながら、想いを巡らせる。脳裏に、初めて目にしたカイルの瞳が鮮明に浮かんだ。






暗がりのことなので、顔の全容までは見えなかった。けれども澄んだブルーの瞳だけが、光を浴びたガラス玉のように光って見えたのだ。


美しさに目を奪われると同時に、哀しげな眼差しに胸が軋んだのも覚えている。


恐怖心以上に、何とも言えない輝きを秘めたあの瞳が、頭から離れない。







カイルが、最後までアメリを乱暴に扱わなかったのは唯一の救いだった。


(あの人の心の中には、良心が眠っているのかもしれない)


小さな小さな望みだった。けれどもここから逃げ出すことの出来ないアメリにとって、その考えは唯一の希望の光だった。
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