獣な次期国王はウブな新妻を溺愛する
「ミハエルはいるか?」


アメリがカイルに想いを巡らせていると、戸口に人陰が差した。シルクハットを被った貴族風の装いの男が、従者を従え店内を覗き込んでいる。


突然の来訪に、アメリはいささか驚きながら手を止め男を観察した。


小太りで、お世辞にも見栄えが良いとは言い難い顔の男だった。目が小さく顔は四角い。口元には、無骨な顔に不似合いな高慢な笑みを浮かべている。


店の奥にいたミハエル老人が、あからさまに表情を曇らせながら出てきた。その手には、小さな麻袋が握られている。


「ドーソン男爵。今日のところは、これでお許しください……」


どうやら、彼がこの町の権力者であるドーソン男爵らしい。ドーソン男爵はミハエル老人から麻袋を受け取ると、馴れた手つきで口を封じていた紐を解いた。肉厚な掌に、金貨が三枚零れ落ちる。


「うむ。まあ、いいだろう。債務期限は、これからもきちんと守るように」


「……はい」


頭を下げたミハエル老人は、悔しそうに歯をくいしばっていた。






「ところで、助手を雇ったのかね?」


ドーソン男爵の視線が、老人の頭からアメリへと移る。


全身を上から下までなぶるような目つきに、アメリは背筋に鳥肌が立つのを感じた。


「見かけない顔だな」


「その娘さんは、助手ではありません。厚意で、仕事を手伝ってくださっているのです」


ミハエル老人の声に、ほう、とドーソン男爵は声を出す。


「お優しいご婦人だ。見かけだけでなく、心までお美しいとは。こんなところで金にもならん仕事をしているなど、もったいない。どうだ、私の邸で働かないかね? 金ははずむぞ」
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